
先日誕生日を迎え、旅行に行ってお祝いをしてもらいました。
そろそろ年を重ねるのが憂鬱で、誕生日までの日々が恐怖のカウントダウンに感じられる年ごろですが、今年はこの旅行のおかげで心待ちにすることができました。
「素敵な温泉旅館があるらしいから行ってみよう」と今回初めて訪れた場所、それは
広島県の東側、福山市の南に位置する鞆の浦(とものうら)。
ここは、坂本龍馬が「いろは丸」という船で瀬戸内海を渡っていたときに、ここ鞆の浦の近くで紀州藩の船「明光丸」に衝突され沈没してしまい、その後上陸して賠償交渉を行った土地なのだそうです。
そして鞆の浦の先にある小さな島「仙酔島」。
なんでも、「仙人ですら酔いしれてしまうほど美しい」島ということで、仙酔島という名前が付いたのだそう。
またまた、そんな大げさな…なんて内心思っていたのですが、
鞆の浦に着くといきなり、この景色!

この旅の最初の目的地は、仙酔島。鞆の浦から仙酔島へは、船に乗って海を渡ります。
その船がなんと、坂本龍馬が乗っていた蒸気船いろは丸を模して造られた、その名も「平成いろは丸」。

かっこいい!なんだか冒険が始まりそうな気がして思わずわくわくしてしまいます。
しかも陸側を振り返って見ると、この旅の最大の目的地、温泉旅館「汀邸・遠音近音(みぎわてい・をちこち)」もすぐそこにありました!地図をきちんと確認していなかったので、まさかこんなに海のすぐ隣にあるなんて とびっくり。

到着した瞬間から完璧な旅でした。
わくわくしながら平成いろは丸に乗り込んだところ、ものの5分足らずであっという間に仙酔島に到着。(もう少し乗っていたかったです。)
信じられないほどの海の綺麗さに、思わずため息。

冬であることを忘れて飛び込みたくなるほど透き通っていて、日本にもこんな海があったのか、と驚くくらいに濃いエメラルドグリーンの水。
船着き場を離れ、お茶屋さんと旅館の横を通り過ぎるとすぐに、ビーチが現れました。

田の浦海岸といって、ここの砂浜の上を裸足で歩くと体内の電磁波を放出できると言われているのだそうです。真冬なので、試しませんでしたが…
そしてその砂浜の先には、遊歩道が。
右手に綺麗な海、左手には様々な表情をした岩を眺めながら、島の奥の方まで歩いていけます。
道はとてもきれいで、歩きやすいです。


歩いているだけで、まるで自然に飲み込まれるような、体の中に自然が染み込んでくるような、不思議な感覚を覚えました。
せわしない毎日の緊張や疲れを、体から そして心からすっと抜き出してくれるような。
ゆっくりと、一歩一歩進みながら、味わいながら、こころゆくまでゆったりすることが許されているような。
そんな優しくてどこか力強いパワーに、私はみるみるうちに満たされていきました。
遊歩道の途中で、岩続きの左手側に、こんな場所が現れました。

一番右の丸い石が並んでいる部分は恐らく人工的に作られたものだと思いますが、注目して欲しいのはその奥。
色も質感も全く異なる岩壁が3つ並んでいること、そしてその間に挟まれた大きな木の下には、岩や土が重なっていることに、気付いて頂けるでしょうか。
仙酔島は大昔に火山活動が活発だった土地らしく、その頃に堆積した土や岩、そして途中で地盤が動いてずれた跡などが残っており、生まれた時代の異なる岩が近くに混在しているのだそうです。
そして岩の下にところどころ洞窟の入り口のような穴があり、そこに水が入り込んでいますが、
この部分は、現在も少しずつ大地が動いていることによってできたもので、日々僅かに拡大中なのだそうです。なんだか、地球が生きていることを改めて感じさせられます。
現地には各スポットに看板があり、歴史や解説が書かれているので、興味のある方はチェックしてみて下さいね。
そんな仙酔島の岩といえば、必ず見たいのが五色岩。
五色岩とはその名の通り五つの色をした岩のことで、日本では唯一 仙酔島でしか見られないそう。
インドの聖典『ヴェーダ』には、「五色岩に巡り会えた人は、永遠の幸せの扉を開くことができる」と書かれているのだそうです。

遊歩道を最後まで歩くと、また海岸が現れました。

ああ、絶対に夏にもまた来たい!
その先へと進むと、山の上に展望台がありました。
登っていくと、この景色。

そしてまたゆっくりと山を下り、遊歩道を歩いて、いろは丸で鞆の浦まで帰ります。
とってもゆっくり島を楽しんでいたので、いろは丸に乗った頃にはそろそろ日が落ちようとしていました。空のこの表情が、私は一番好きかもしれません。

そしていろは丸を降りてすぐ、「汀邸・遠音近音」へ。
お部屋のベランダから外と眺めると、さっきいろは丸に乗って渡った海が、すぐ目の前に。


意外と夜遅く21時半まで運航してくれている いろは丸も部屋から見ることができました。
しかもこんな景色を眺めることができる露天風呂もお部屋についています…
そして、楽しみにしていた汀邸・遠音近音での夕食は、まるで夢の中にいるようでした。








ああ、メニュー表の写真を撮っておくべきでした。
丁寧に作られた優しい味のごはんにとっても満たされました。珍しい野菜も沢山使われていて、色々な発見があって楽しかったです。
鞆の浦の伝統的な薬味酒、「保命酒(ほうめいしゅ)」の試飲もさせてくれました。スパイスの効いた独特な味がしましたが、これはこれでおいしいかも…ジンジャーエール割りがおすすめなのだそうです。
鯛めしは、食べきれなかった分はおにぎりにして、夜食にと持たせてくれました。
汀邸・遠音近音のスタッフの方は、宿泊担当の方もレストランの方も本当に気配りが細やかで上品で、感動しました。こんなに一人残らず質の高いサービスを提供されているなんて、並々ならないこだわりを感じます。スタッフの方々を見習って、日頃の自分の振る舞いを反省したくなりました。
そして翌朝。少し雨が降っていましたが、それでも爽やかな海!

窓際の席へと案内され、すっかり大好きになってしまったこの海を眺めながらの朝食です。和食と洋食が選べましたが、和食を選択。

普段あまり沢山朝ごはんを食べないので、出張先のホテルの朝ごはんは大抵あまり食べられず勿体ない思いをするのですが、この日はいっぱい食べました。
朝食を終えると、気付けば1時間も経っていました。海を眺めたり、お話したりしながら、ゆっくり朝ごはんを楽しむ…こんな風に一日を始められると、とっても良い一日になりそうな気がします。



そのあとチェックアウトして鞆の浦を散策。

映画のセットでも、テーマパークでもない。人が住んで生活を送っている本物の町が、この姿だなんて。
本当にタイムスリップしたようです。
日本人なのに、「日本ってこんなところなんだなあ」とまるで初めてこの国を見たような気持ちになりました。
昨夜試飲させてもらった保命酒のお店も、いたるところにありました。

この階段を登っていくと、鞆の浦を見渡せる展望台に到着。

鷹がいました。けっこう近くで何羽も見られました。かっこいい。風に乗って、気持ちよさそう。

そしてまた降りていき、鞆港へ。
船がたくさんとまっているけど、海は相変わらず透き通ったまま。


すぐそばにカフェがありました。「鞆の浦 @ Cafe」というお店だそうです。入ってみたかったけど、朝食ですっかりおなか一杯だったので、また次の機会に。

ゆったりと癒されながらもなんだか力強いパワーに包まれているような。帰る頃には心がすっきりとして、丸くなって、どこか凛とした気持ちになりました。
日本国内にまたお気に入りの場所が一つ増えました。またきっと、次は海水浴のできるシーズンに行きたいです。